Study


がん患者さんとそのご家族が経験される心理社会的な問題を軽減する一助とすることを目指し、以下のようなテーマで、研究活動に取り組んでいます。

最近は特に、小児がん患児とのコミュニケーションをテーマとした研究を中心におこなっています。

それぞれの研究の成果はACHIEVEMENTのページをご覧ください。

 

キーワード:がん、家族、親子、コミュニケーション、意思決定

 

●がん治療における意思決定に関する行動経済学的研究

がんと診断された後、患者やその家族はどこでどのような治療を受けるか、という選択を迫られます。また、残念ながら病気が進行し、治療の効果が認められなくなってきたときには、これ以上の治療を行わない、という選択をする必要があることもあります。医学の分野では、「正しい情報を十分に提供すれば患者は合理的な判断が可能」という前提に立って、意思決定に関連する研究が数多くなされてきました。

しかし、実際には、必ずしもこうした医師の態度が役に立つわけではありません。それは、医師も患者も、様々な認知的バイアスと呼ばれるもののの影響を受けながら意思決定を行っているからです。行動経済学という領域で古くから研究されてきたこうした概念を取り入れることで、より有効な意思決定支援を可能にすることを目指した研究を行っています。

(分担執筆書籍1、学術論文5)

 

 

● 思春期・若年がん患者への病状説明に関する研究

がんと診断されたとき、病状が進行したとき、治癒が望めなくなったとき、患者へその事実を伝えることは、患者にとっても医療者にとっても大きな負担をともないます。一般にがん患者に対する病状説明については、多くの研究が重ねられており、望ましい伝え方についてもある程度方針が示されています。しかし患者が未成年である場合、治療方針等の決定権は保護者にあることなどから、何をどこまで、どのように伝えるかについては、各医療者にゆだねられているのが現状です。

思春期・若年がん患者が、病状説明についてどのような希望をもっているのか、それは一般成人と異なるのか、同じなのか、異なるとすればどのような工夫が求められているのか、といったことを明らかにすることを目的とした研究を行っています。

(学術論文2)

 

 

●腫瘍医が行うEnd-of-Life discussionの時期に関する研究

昨今、「早期からの緩和ケア」として、進行・再発がん患者に対し、End-of-Lifeに関連する事柄(たとえば治療がなくなった際の療養場所、希望するすごし方、延命治療等)について、早い段階から話し合いを重ねることが推奨されています。しかし実際には、治療中の時期からこうした話し合いをもつことは、医療者にとっても負担をともなう課題です。

実際に治療にあたる医師が、End-of-Life discussionをどのようなタイミングで行っているのか、またそのタイミングにはどのような要因が関連するのかを明らかにする研究を行いました。

(学術論文8)

 

 

● 小児がん患児とのEnd-of-Life discussionに関する研究

小児がんの子どもの死が近づいたとき、その子どもと病状や今後の方針についてどのように話をするか、ということは、医療者にとっても保護者にとってもとても難しい問題です。日本では、こうした状況で、病気が治らないことや残された時間が短いことについて、子どもと話をすることは必ずしも多くはありません。

このことについて、医師がどのように考えているのか、当事者である患児はどのように考えているのか、ということを明らかにし、今後のコミュニケーションのあり方を検討することを目的とした研究をおこなっています。

(学術論文10)

 

 

● 難治性小児がん患児の家族支援に関する研究

子どもが小児がんになり、治療をおこなっても治癒が望めないと診断されたとき、患児だけでなく、その親やきょうだいもまた、さまざまな困難に直面します。

しかし、慢性的な人手不足に悩まされる小児医療の現場では、家族の問題にまで手がまわらず、支援が十分に行き届かないことも少なくありません。

現在のマンパワーの範囲内で、ご家族にとって本当に役に立つ支援体制の整備につなげることを目的とした研究をおこないました。

(博士論文、学術論文9,18)

 

 

● 終末期にある成人患者さんへの余命告知に関する研究

家族ががんになり、予後が長くないと診断されたとき、その事実を患者さんにどう伝えるかということは、家族にとって非常に重大な課題となります。

また医療者にとっても、患者さんやご家族に予後が短と伝えることは難しい課題です。

どのように予後を聞き、どのように患者さんに伝え、どのように遺された時間を過ごすのか、判断に迷うご家族の負担を少しでも軽減することを目的とした研究をおこないました。

(修士論文、博士論文、学術論文14,15,17)

 

 

● 乳がん患者と子どもとの関わりに関する研究

多くの乳がん患者は病状説明を含む子どもへの対応に苦慮するということが報告されており、そのストレスの軽減の重要性が指摘されています。特に、子どもに対して自分の病気についてどのように説明するのがよいか、ということは乳がん患者にとって判断に迷う問題の1つです。

子どもに病気について説明することには、どのような利点があり、どのような障害があるのか、実際の患者さんの体験から探索することを目的とした研究をおこないました。

(卒業論文、学術論文19)

 

 

● 小児がん患児と親との関わりに関する研究

家族ががんになったとき、病気や治療のことをどのように伝え、どのように家族内で扱うかということは、家族全体にとって非常に大きな課題となります。特に患者が子どもの場合、発達的な問題もからみ、その困難度が増すことが指摘されています。

親子間で、病気や治療についてどのような話がなされているのか、話をすることによって、家族がどのような経験をするのか、どのような難しさがあるのか、実際のご家族の体験から探索することを目的とした研究をおこないました。

(卒業論文)